ちょうぶんをかきちらすまき。
ぶぅんぶぅん(あとで消すかもしんない。目が覚めたら)
迫る機巧の群れ。悪趣味に人を模した鳩時計が、無表情な目を向けた。
テレポートした先、瞬時に降り立った僕に注がれるうつろな穴を感じながら、
素早く手袋を付け替える。セレクトしたのは器用度上昇の魔術が掛かった手袋。
瞬間移動を可能とさせていた手袋は腰のホルダーへ。
僅かではあるが、滑らかに動くようになった唇を舌で湿らせる。
注がれた視線が僕を認識し、歯車の音が響き始めた。…一瞬でトップギア。
その巨体に見合った歩幅と、巨体に見合わぬ滑らかさで、一斉にこちらに接近する。
その数、約八体。中堅の騎士ですら、まともにやりあえば数秒で細切れになるだろう。
だがしかし臆する必要はなかった。手にした杖を袈裟がけに振り下ろす。
「ファイヤーウォール!!!」
振り下ろす動作だけで発生する炎の壁は、しかし波としてアラームに襲い掛かる。
術者の動作により、この魔法は単なる壁としての役割だけでなく、
突き進み行く手を阻む波と化す。当然のように、ただ撃つだけのものより強力だ。
火の飛沫を横目で確認しながらもう一発。
だがこれだけで倒しきれるほど、この時計3Fの住人は甘くない。
確かに熱で部品はひしゃげ、仮面は黒く焼けてはいくものの、
その動作を完全に止めるところまではいかない。 しぶとさには、定評があった。
故に、もうひとつ止めを放つ必要がある。これこそが本命だ。
先ほどよりも精密に、そして長い詠唱を始める。
滑らかに動く唇が複雑な韻を唱え、突き出した杖の先から魔法陣が浮かび上がった。
熟練の魔法使いのみが自在に操れるとされる、吹雪の魔法。
簡易なものであれ殆どの者が凍りつくほどのそれの、更に上位。
未熟な術者であれば10秒を要するところ、僅か3秒―――――!!!
「ストーォォォムッ!!!」 完成した魔法陣が雹を巻き上げ、
「ガスッ」 アラームが僕を殴りつける!
「痛ッ?!」 見れば炎の壁は”アラームの向こう側”を走っている。
ふと思い出す。さきほどわずかな時間の空白があったことを。
精神集中による高揚かとも錯覚したそれは、音も動きも何もかもを飛ばしていたことを。
だが、それが意味するそれは
「ラッグいバカこっちくん イヤアアアアアアアア?!」
そんなかんじですぶーぶーキキー。(おもちゃ車キキー)